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弁護士の残業代請求コラム

私の時給単価っていくら?~残業代計算における基礎賃金の考え方~

投稿日:2018年7月19日 更新日:

はじめに

月給制で働かれており、残業代が支払われないにもかかわらず、長時間の残業をされている方は、「時給換算すると、一体いくらなんだろう?」と疑問に思われたことがあると思います。また、残業代を請求してみようとお考えの方は、残業1時間当たりいくらの残業代が支払われるのか計算する必要があります。

時給の計算は、得ている給料を労働時間で割るという単純なものではなく、法律によって時給の計算に関するルールが定められています。
具体的には、時給は「基礎賃金÷所定労働時間」で計算することになります。
今回は、「基礎賃金」とは何か?得ている給料のうち、どの部分が時給計算の基礎となるのか?についてご説明します。

残業代の計算方法

まず、残業代の計算方法について簡単にご説明します。
残業代の計算式は、次のとおりになります。

【残業代の計算式】
残業代の金額=時給単価×割増率×残業時間

①時給単価
時給単価は、最初にご説明したとおり、基礎賃金÷所定労働時間で計算されます。

【時給単価の計算式】
時給/1時間当たり=基礎賃金÷所定労働時間

基礎賃金については、詳しくは後述します。簡単にいうと、給料として支給されている金額のうち、時給計算の基礎とすべき手当のことをいいます。

所定労働時間とは、入社した当時に決められていた勤務時間数のことをいいます。

たとえば、午前9時から午後5時までの勤務(休憩1時間)の方で、土日が休日とされている場合は(説明のため、祝日、年末年始の休暇はないものとして計算しています。)、1カ月の所定労働時間は、約152時間となります。

この点、労働基準法上は、1日8時間、1週間で40時間までを労働時間の上限としていますので、法律上の上限の所定労働時間は約174時間となります。もし、ご自身の会社の所定労働時間がわからないという方は、174時間で計算すれば間違いはないでしょう。

なお、給与形態によって、時給単価の計算の方法が異なりますので、詳しくは、以下のページをご覧ください。
日給制の方は、「残業代の計算方法⑥~日給制の残業代の計算~」
月給制の方は、「残業代の計算方法③~月給制の残業代の計算~」
年棒制の方は、「残業代の計算方法⑤~年棒制の残業代の計算~」
歩合制の方は、「残業代の計算方法④~歩合制の残業代の計算~」

②割増率
残業をした場合、労働時間に応じて時給が増えるのではなく、時給に割増率を乗じた金額が支払われることになります。「残業代は25%増し」とよく言われるのが、この割増率のことです。

それぞれ、時間外労働、休日労働、深夜労働について、次の割増率を定めています。

割増率について、詳しくは「残業代の計算方法②~残業時間の種類~」をご覧ください。

③残業時間
残業時間には、時間外労働時間、休日労働時間、深夜労働時間があります。
また、時間外労働時間には、法定時間内労働時間と法定外時間労働時間があります。

基礎賃金 

基礎賃金とは、残業代計算に必要な時給単価を算定するに当たり基礎となる給料のことをいいます。つまり、支給されている給料全額を所定労働時間で割って、時給を出すというわけではなく、支給されている給料のうち時給単価の計算の基礎となるものと、ならないものに分かれることになります。

何が、時給単価の計算の基礎となるかについては、次のとおり、労働基準法や労働基準法施行規則で定められています。

労働基準法37条5項
「,,,割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金には参入しない。」
労働基準法施行規則21条
「、、、、、次に掲げる賃金は、、、割増賃金の基礎となる賃金には参入しない。
1 別居手当
2 子女教育手当
3 住宅手当
4 臨時に支払われた賃金
5 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

以上のとおり、家族手当、通勤手当等決まった手当を除いた給料が基礎賃金となります。

除外賃金についてのポイント

①除外賃金となるかは、名称が少し違っても内容により判断!

除外される賃金に当たるか否かは、名称にかかわらず、実質によって扱うとされています(昭和22年9月13日発基17号)。
したがって、子ども手当、扶養手当という名称であっても、「家族手当」と同じとして、除外賃金となる可能性があります。

②各従業員の事情にかかわらず一律に支給されていれば除外賃金ではない!
例えば、住宅手当の名称であっても、住宅に要する費用に「応じて」算定されるものでない場合は除外しなくてもよいとされています(平成12年3月31日基発1170号)。
つまり、「住宅手当」であっても、住宅の有無や内容にかかわらず、一律に支給されていれば、もはや普通の給料の一部と同じであり、除外賃金として取り扱われません。

③労働基準法、施行規則で挙げられている手当以外は、除外賃金にならない!
労働基準法、労働基準法施行規則で定められている各手当以外の手当を、就業規則などで除外賃金とすると定めても、その定めは無効になります。

家族手当

扶養家族又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算定した手当は、名称が物価手当、生活手当その他の名称の如何を問わず家族手当として取り扱われます。しかし、家族手当と称していても、扶養家族数に関係なく一律に支給される手当は家族手当とみなされません(昭和22年11月5日基発231号)

通勤手当

通勤手当は、原則として、実際の距離に応じて算定するものであり、一定額までは距離にかかわりなく一律に支給する場合には、実際距離によらない一定額部分は割増賃金の算定基礎に参入しなければならないとされています(昭和23年2月20日基発297号)

住宅手当

住宅手当は、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいい、住宅の賃料額やローン月額の一定割合を支給するもの、賃料額・ローン月額が段階的に増えるに従って一定額を支給するものなどがこれに当たり、住宅に要する費用にかかわらず一定額を支給することはこれに該当しないとされています(平成11年3月31日基発170号)

臨時に支払われる賃金

「臨時に支払われる賃金」とは、臨時的・突発的事由に基づいて支払われたもの及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、かつ非常に稀に発生するものをいいます(昭和22年9月13日基発17号)。

例えば、 病気欠勤及び病気休職中に月給者に支給される加療見舞金(昭和27年5月10日基発6054号)、退職金等が臨時に支払われる賃金と考えられています。

1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金というのは、なかなかイメージが付きづらいですが、次のようなものがこれに当たるとされています。
①賞与
賞与とは「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定されていないもの」をいい、「定期的に支給され、かつ、その支給額が確定しているものは、名称のいかんにかかわらず」賞与とはみなされません(昭和22年9月13日発基17号)。
したがって、契約書や就業規則で、基本給の〇カ月分を支給すると明確に支給額が確定している、いわゆる固定賞与は、「1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金」には当たらず、割増賃金の算定基礎となります。

②1カ月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当

③1カ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当

④1カ月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当

残業代の支払い

時間外手当、休日手当など残業代の支払は、当然、この基礎賃金に含まれず、除外賃金となります。
したがって、会社から固定残業代、定額残業代、みなし残業代などとして、決まった金額の残業代が支払われている場合でも、この手当は原則として基礎賃金とはなりません。

梅田太郎さんの場合

具体的に、梅田太郎(40代、男性、サラリーマン)さんの架空の事例を参考に、基礎賃金と時給単価を計算してみましょう。

私は会社の総務部で働いており、32万円の給料と交通費3000円の支給を受けています。給料の具体的な内訳は、基本給30万円、家族手当1万円、定額残業代1万5000円です。家族手当といっても、私は独身ですし、従業員全員が一律で家族手当1万円を支給されているそうです。なお、私の会社では雇用契約書や就業規則もなく、社長の気分で出社時間や休日も決まるため、所定労働時間についてわかりません。

梅田太郎さんの基礎賃金は次のとおりになります。

まず、基礎賃金を計算するにあたって、給料明細書を見ます。そして、どれが除外賃金に当たるか判断することになります。除外賃金として、家族手当、固定残業代、交通費が考えられるところですが、家族手当は従業員の事情にかかわりなく一律に支払われていますので、除外賃金には当たらないことになります。

そうすると、除外賃金は、固定残業代、交通費のみとなります。
基礎賃金は、除外賃金以外のものとなりますので、梅田太郎さんの場合、基本給と家族手当が基礎賃金になりますので、基礎賃金は31万円になります。

そして、所定労働時間は不明とのことですので、法律上の上限である174時間を所定労働時間と考えることになります。

したがって、梅田太郎さんの時給単価は

基礎賃金31万円÷174時間=1781円

となります。みなし残業代の支給が無効となる場合がある!?

先ほど、残業代の支払いであるみなし残業代は、基礎賃金とはならないというご説明をしました。

しかし、みなし残業代の支給が無効と判断される場合が多くあります。例えば、当初みなし残業代の支払いがなかったにもかかわらず、勝手に基本給を少なくされ固定残業代に割り振られてしまった、基本給に残業代が5万円含まれているという場合などです。

このように、固定残業代の支給が無効になる場合には、固定残業代として支払われている金額が、基礎賃金に当たることになります。

みなし残業代の有効性について、詳しくは「みなし残業という残業代の定額払いって違法じゃないの?」をご覧ください。

時給単価が最低賃金を下回る場合

仮に、計算した時給単価が、最低賃金を下回っている場合は、時給が最低賃金まで引き上げられます。

最低賃金法4条
2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

例えば、時給計算をすると時給800円になった場合、大阪府の最低賃金は909円ですので、時給は800円ではなく909円と計算することになります。
以下では、関西圏の最低賃金についてご紹介します。
①京都府  856円
②兵庫県  844円
③滋賀県  813円
④奈良県  786円
⑤和歌山県 777円

最後に

基礎賃金の考え方をご理解いただけたことと思いますが、除外賃金は、その実質的な内容を見ることになりますので、判断がつきずらいこともあります。また、勝手に給料が減額されたり、内訳を変えられたていたりして、自分自身支給されている手当の内容を理解できていないということもあるでしょう。そのような場合は、弁護士にご相談いただくことが解決の近道になります。

大阪バディ法律事務所は、残業代請求にについて豊富な実績があります。
基礎賃金、残業代の計算でお悩みの方は、当事務所の弁護士(無料)までお気軽にご相談下さい。

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