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弁護士の残業代請求コラム

残業代請求の時効と弁護士が内容証明を送るワケ

投稿日:2018年7月19日 更新日:

はじめに

インターネットで「残業代請求」という検索して表示されるサイトをみると、「残業代の請求には時効があるので、早めにすべきだ。」「残業代の請求は内容証明ですべきだ。」という文章を目にされると思います。

しかし、イマイチ、時効と内容証明の関係について、理解しずらいと思われている方もいらっしゃるでしょう。

そこで、残業代請求の時効と弁護士が内容証明を送るワケについて、詳しくご説明したいと思います。

時効とは何か?

時効とは、一定の事実関係が継続した場合には、真実にかかわらず、その事実状態をそのまま認めてしまおうという制度です。

つまり、一定の期間が経過すると、未払い残業代を請求する権利が失くなるという制度です。

なぜ、このような時効という制度があるかというと、2つの理由があるといわれています。

1つ目は、
「権利の上に眠るものは保護に値せず
」という考えです。
長期間権利の行使を怠った者は、その権利を放棄したとみなすべきであるという考えです。

2つ目は、
「継続した事実状態の尊重」
という考えです。長期間、権利が行使されない状況になれば、もはや権利は行使されないと期待してしまうものであり、それを一転覆してしまうのは妥当ではないという考えです。

以上のような考えから、時効という制度ができたのです。

しかし、いかに権利を行使する側、つまり、従業員が残業代を請求しなかったからといって、当然に、残業代を請求できなくなってしまうとするのは妥当ではありません。
なぜなら、会社側が未払い残業代があることに気づいておらず、未払いがあるのであれば、従業員のためにも会社のためにも過去に遡って支払いたいと考えることもあるからです。

そのため、法律は、会社側の考えにも配慮しなければならないと考え、時効の成立には、「援用」を必要としました。

援用とは、会社が時効による利益を受ける意思を表示することをいいます。
つまり、時効になっているので、残業代は支払わない!という意思を示すことです。

したがって、時効により残業代が請求できなくなるための条件としては、2年間の経過だけでなく、会社の「援用」も必要になります。

残業代の時効は何年なのか?

残業代の時効については、労働基準法が次のとおり、定めています。

労働基準法115条(時効)
この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合に おいては、時効によつて消滅する。

したがって、未払い残業代は、2年間請求をしないと時効により、請求できなくなってしまいます。

現在、民法改正作業があり、残業代の時効について5年にすることが議論されていますが、経済界の反対があり、実現するかどうかは不透明です。

現在のところは、残業代の時効は2年と覚えておきましょう。

いつから2年なのか?

2年間経過すると残業代が時効になり請求できなくなるということは理解いただいたと思います。それでは、2年というのは、いつから2年なのでしょうか。

民法は、次のとおり、いつから2年なのかについて定めています。

民法第百六十六条
消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。

したがって、権利を行使することができる時から2年です。

権利を行使することができるときというのは、いつでしょうか。

「権利を行使することができるとき」とは、残業代が支払われるべきであった日です。通常は、給料支払日となります。

みなさまは会社で働いたとしても、給料支払日までは、給料を支払えとはいえません。
他方、給料支払日になると、給料を支払えと言えることになります。
多くの会社では、残業代も給料と同じ日に支払われますので、残業代の「権利を行使することができるとき」も、給料支払日になることが多いです。

もし、給料と残業代の支払日が異なる場合は、残業代の支払日が、権利を行使することができるとき」になります。

稀に、毎月1日から25日給料計算期間をとして、当月末日に給料を支払うという会社があります。このような場合、26日から31日までの残業代を計算し、当月末日までに支払うことできません。

このような給与支払い体系の場合に関して、残業代の支払時期を判断した裁判例があります。

平成17年12月1日付大阪高等裁判所の判決
毎月1日から月末までの賃金を当月25日に支給していた会社において、「超過手  当については、現実の超過勤務に対する対価である以上、超過勤務をしない限り発生せず、その額を算定することもできないものであるから、超過勤務手当に関する限り、その支払は、当月25日払いではなく、翌月25日払であったと認められる。」と判断しました。

以上のように、実際の残業代の計算・支払状況によるものの、残業代の支払については翌月の給料日に支払われることになっていたと考えることになるでしょう。したがって、権利を行使することができるときとは、翌月の給料支払日となります。

具体的事案と残業代が請求できる期間

① 大阪花子さん(30代、女性)の事例
私は、保育士をしており、23万円の給料をもらっていました。しかし、子どもを見ていると休憩もとれませんし、保育計画や学年だよりを作るために毎日1時間程度の残業をしていました。しかし、残業代は一切支払われていませんでした。

そこで、平成30年10月31日付で退職を機に、残業代請求をしようと考え、未払い残業代を計算することにしました。4年ほど働いていましたので、退職の2年前の残業代から退職までの期間を計算することにしました。
保育園の給料は、1日から31日までを給与計算期間として、翌月15日に支払うこととされていました。
具体的には、いつの分から残業代が請求できるのでしょうか。

② 大阪花子さんの残業代請求期間
大阪花子は、平成30年10月31日に退職され、その後、残業代を請求することとされました。平成30年11月1日以降に請求をするとすると、2年前までの平成28年11月15日に支払われるべきであった残業代(給与計算期間は平成28年10月1日か31日まで)から平成30年11月15日に支払われるべき残業代の25カ月分請求できることになります。

ただし、大阪花子さんが退職後直ぐに残業代を請求すると退職後の最後に支払われる給料を遅らされたり、離職票を発行してもらえなくなる等の嫌がらせがあると考え、残業代の請求を平成30年11月15日に支払われるべき給与が振り込まれた後にした場合は、結果が異なります。

なぜなら、平成30年11月16日以降になると、平成28年11月15日に支払われるべきであった残業代は、2年の経過をもって、消滅してしまうからです。この場合は、平成28年12月15日に支払われるべきであった残業代から平成30年11月15日に支払われるべきであった残業代の24か月分しか請求できなくなります。

弁護士が内容証明を送るワケ

先ほどご説明したとおり、残業代を請求できる期間は、過去2年分のみになります。
残業代を請求する時期が遅れれば遅れるほど、毎月、2年前の残業代が請求できなくなるのです。

では、残業代を請求したものの、会社が直ぐに未払い残業代を支払わない場合や支払いを拒否した場合、時間が経てば残業代は時効となっていくのでしょうか。

この答えは、まさに、弁護士が内容証明郵便を送付するワケになります。

民法は、時効の進行を止める事由を次の通り、定めています。

第153条
催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

残業代を内容証明で請求することは、この「催告」に当たり、内容証明郵便が到着してから、6カ月間時効の進行が止まります。

なお、口頭での残業代の請求も、この「催告」に当たりますが、後日、会社側が「そんなこと聞いていない。」などと言って、しらばっくれた場合、口頭で請求したことを証明することは困難です。

内容証明郵便の送り方について詳しくは、「弁護士が教える残業代請求の内容証明の書き方」こちらまで。

残業代請求の交渉期間のタイムリミット

以上のとおり、内容証明で残業代を請求した時点で、6カ月間時効の進行が止まります。

しかし、逆を言えば、6か月経過すると、時効の進行が止まっていたという事実がなくなってしまうのです。

ここで注意が必要な点があります。
6か月を経過した時点で、そこから再度時効が進行するというわけではないという点です。
時効の進行が止まっていた事実が無くなるということは、内容証明を送っていなかったと同じこととなり、6か月経過した時点で、多くの場合6カ月分の残業代が時効により消えてしまいます。

したがって、残業代請求をして会社と交渉をするタイムリミットは、6か月間となり、この間に何らかの結論を出さなければならないのです。

タイムリミットを延長する方法

先ほど述べた「催告」以外にも、時効の進行を止め方法があります。
そして、「催告」は6カ月間のみ時効の進行が止まるのに対して、次の時効の中断事由は、6か月という時間制限はありません。

民法147条(時効の中断事由)
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
二 差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認

①「請求」
ここでいう、「請求」とは、裁判所が関与するもののことをいい、労働審判の申立や訴訟のことをいいます。「請求」という言葉からすれば、口頭での請求、内容証明郵便による請求も「請求」に含まれそうですが、解釈上、裁判所の関わらない請求は、「請求」には当たらず、「催告」に留まると考えられています。

労働審判や訴訟をしている間は、時効により残業代が請求できなくなるという事態は生じませんので、安心して、労働審判、訴訟に集中することができます。

②差押え、仮差押え又は仮処分
差押えというのは、未払残業代を回収するべく会社の預貯金などを凍結し、そこから回収することをいい、仮差押えとは、裁判が終わるまでの間、会社が財産を隠さないように預貯金口座などを凍結することをいいます。なお、仮処分については、残業代請求においては、関係が薄いので、説明を省略します。

③承認
「承認」とは、会社が残業代が未払いであり、支払う義務があることを自ら認めていることをいいます。

会社が残業代の未払いを認めている場合は、認めたときに時効が中断し、認めたときを始期として、2年間は時効が成立しないことになります。

ただし、残業代の請求を口頭でするのか内容証明でするのかという問題と同じように、会社が当初未払い残業代を認めていたとしても、しらばっくれる場合がありますので、必ず会社が未払い残業代を認めた事実を証拠化しておく必要があるでしょう。

特殊な事案においては、残業代の時効は3年!?

残業代請求の時効が2年であることは先に述べたとおりです。
しかし、残業代の未払いが悪質であり、もはや不法行為といえる場合には、不法行為の時効である3年が適用されると判断した裁判例があります(平成19年9月4日付広島高等裁判所判決)。

しかし、この事案は、
①34年の勤務期間一度も営業会議への参加などの時間外労働に対し残業代が支払われず、残業代未払いが常態化していたこと
②労働基準局からの指摘があったにもかかわらず改善しなかったこと
③会社には残業代未払いを是正する意思がなかったこと

など、非常に悪質な事案でした。

したがって、一般化できない特殊な事案といえるでしょう。

最後に

以上のご説明で、残業代請求の時効と弁護士が内容証明を送るワケをご理解いただけたと思います。

また、同時に、残業代請求を内容証明で送るタイミングの重要性や交渉期間にタイムリミットがあることもご理解いただけたと思います。

内容証明を送るタイミングが遅れてしまったり、交渉期間のタイムリミットが迫っているにもかかわらず労働審判、訴訟の準備ができていないと残業代が時効により消滅し、場合によっては請求できたはずの残業代数十万円から数百万円が失われてしまうことになります。

大阪バディ法律事務所は、未払い残業代請求に際して、適切なタイミングで内容証明を送り、迅速に労働審判の申立、訴訟の提起を行います。
もし、残業代の請求をお考えであれば、お早めに当事務所の弁護士までご相談(無料)下さい。

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