残業代計算から会社への請求・回収まで、残業代請求の経験豊富な弁護士が対応!

弁護士の残業代請求コラム

弁護士が教える残業代請求の内容証明の書き方

投稿日:2018年7月19日 更新日:

はじめに

残業代の請求をお考えの皆様は、会社から「うちは残業代でない。」「残業代は基本給に含まれている。」と言われていたり、15分未満の残業は切り捨てられる、サービス残業代が常態化しているなどの事情に不満を持たれていることと思います。

そして、残業代を請求するための方法を色々と検索されると、内容証明郵便を送付することが有効だという情報を得られるはずです。
しかし、日常生活で内容証明郵便というものを送ることはほとんどありませんので、「内容証明って何?」「どうやって送るの?」と疑問をお持ちの方が大半です。

そこで、そもそも内容証明郵便とは何か、どうやって送るのか、どのような文面を送るべきなのか、についてご説明します。
是非、最後までお読みいただき、内容証明を出す参考にしていただければ幸いです。

内容証明郵便とは

内容証明とは郵便局のホームページで次のとおり、定義されています。

内容証明とは
いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度です。
当社が証明するものは内容文書の存在であり、文書の内容が真実であるかどうかを証明するものではありません。
内容文書とは、受取人へ送達する文書をいいます。
謄本とは、内容文書を謄写した書面をいい、差出人及び差出郵便局において保管するものです。

つまり、①あなたが、②会社に対して、③残業代を請求する、内容の文書を送ったということを郵便局が証明してくれる制度のことをいいます。

もし、あなたが送った文書を無くした、会社が文書を受け取ったが残業代に関する文書ではなかったと言い訳した場合には、送った文書が郵便局に保管されていますので、郵便局に確認すれば、あなたが会社に対して残業代を請求する内容の文書を送ったことは明らかになります。

ただし、内容証明郵便は、文書の内容を証明してくれるという制度に留まり、会社がその文書を受け取った、ということまでは証明してくれません。
そのため、会社が、文書を受け取っていないと言い訳することを許すことになります。

そこで、内容証明郵便を送付する際には、必ず、配達証明をつけましょう。

配達証明とは、郵便局のホームページでは、次のとおり、定義されています。

一般書留郵便物等を配達した事実を証明します。
郵便物等の実際の受取人が誰であるかを証明するものではありません。

つまり、会社が受け取ったという事実を郵便局が証明してくれます。
会社には、社長だけでなく、従業員が何人もいることが多いですが、社長が直接受け取ったのか、従業員が受け取ったのかまではわかりません。しかし、いずれの方が受け取ったとしても、会社として受け取っていることは間違いありませんので、特段問題は生じません。

以上のとおり、残業代の請求は、内容証明郵便で、かつ、配達証明を付けたものにすべきです。なぜなら、次に説明する時効の問題にかかわる重要な点だからです。

なぜ、残業代の請求は内容証明でしろといわれるのか?

正式な文書を作った経験がない。文書を書くのが苦手。という方もいらっしゃると思います。そのような方は、残業代を口頭で請求すればいいんじゃない?と思われると思います。

しかし、口頭での請求という考えは、時効の中断の観点から、リスクの高い判断です。

残業代の時効は2年であり、毎月給料支払日の翌日に2年前に支払われるべきであった残業代が時効により消滅します。その時効を止めるためには、配達記録付き内容証明郵便を送付することが非常に有用だからです。
詳しくは、、「残業代請求の時効と弁護士が内容証明を送るワケ」をご覧ください。

内容証明郵便を送る手順

内容証明郵便の意味、送るメリットについて、ご理解いただいたと思います。
次に、架空の事例をもとに、内容証明郵便で残業代を請求する手順をご説明します。

梅田一郎さん(40代、男性)
私は、営業マンをしており、朝から夜遅くまで、営業先回りや新規営業していましたが、残業代は全く支払われていませんでした。休日出勤もありましたが、もちろん休日手当もありませんん。そこで、退職を機に、残業代を請求しようと考え、会社に内容証明郵便を送ることにしました。

内容証明郵便に使用する書式を入手

私は、字があまりキレイではないので、パソコンで内容証明の文書を作成することにしました。調べると内容証明郵便を送るには、決まった文字数やルールがあるみたいです。インターネットで「内容証明郵便 書式」と検索すると、無料でテンプレートがダウンロードできたの、そのテンプレートを使用して、作成することにしました。

内容証明郵便のルール(詳しくは、郵便局のホームページでご確認下さい。)

書式 字数・行数のルール
縦書きの文書にする場合 1行20字以内、1枚26行以内
横書きの文書にする場合 1行20字以内、1枚26行以内

となっています。

●[Microsoft word]の設定を変更して、文書を作成する場合
ワードを開けていただき、以下のとおり、レイアウトの設定を変更して下さい。

●手書きで文書を作成する場合
手書きで文書を作成する場合には、内容証明郵便のルールに沿った用紙が販売されていますので、ご購入下さい。インターネットの通信販売でも購入することができますし、大型の文房具店でも販売されています。

●内容証明郵便をインターネットを利用して送付する場合の書式は、コチラをご覧ください。

文案を作成する

私は、手に入れたテンプレートを使用して、内容証明で送る通知書の文案を作りました。タイトルは請求書でも通知書でもなんでも問題ないようですが、私は通知書というタイトルにしました。作った文書は、次のようなものになります。

ポイント
①宛先
会社名と会社の代表取締役の氏名を記載することが必要です。代表取締役の氏名がわからない場合には、お近くの法務局で会社の登記を確認したり、会社のホームページで確認することになります。

②退職日や勤務していた営業所を記載する。
内容証明は、会社の本社に送ることが通常ですが、大規模の会社の場合、従業員が多数います。そうすると、本社は、あなたの従業員情報を確認するのに長時間必要になります。迅速に会社の対応を求めるためにも、残業代を請求しているのが誰なのか把握しやすいようにすることが大切です。

③残業代の請求期間を記載する。
本来であれば、残業代の金額は会社側が計算すべきで、従業員が計算する必要はありません。
しかし、残業代を請求する期間が不明確であれば、会社としてもどの期間の分の残業代を計算したらいいのかわかりません。

基本的には、請求する日から2年分の残業代をすることになりますので、2年の期間を特定して記載することがいいでしょう。
また、金額を記載する方が求めている金額が分かりやすいのいいですが、専門家でもないにもかかわらず、正確な残業代を計算することは困難です。ですので、ある程度、ざっくりの数字でも問題ないと考えます。

残業代の計算については、「弁護士に頼まず自分で残業代を請求する方法」をご覧ください。

④会社の対応期限を定める。
こちらから、会社が残業代を支払うべき期限、連絡をさせる期限を設定しければ、会社側は対応を先延ばしにしがちです。期限を守らなければ会社にペナルティを与えられるわけではありませんが、期限を守らなかった場合に裁判をするという予告をすることによって、誠実対応を期待できます。

⑤連絡先を記載する。
残業代の正確な計算には時間がかかりますので、必ずしも10日で未払い残業代の総額が判明するとは限りません。また、会社は顧問弁護士に相談の上対応を決めたいと考えることもあるでしょう。そうすると、誠実に対応する気があったとしても10日を経過してしまうことがあります。そのような場合には、あなたに一度連絡をすべきことになりますが、連絡先の記載がないと連絡をとることができません。携帯電話の番号を記載することは必須ではありませんが、メールアドレス等簡易に連絡が取れる手段を記載することが望ましいです。

内容証明を送付する。

内容証明で送る文書の作成が終わり、いよいよ内容証明郵便を出そうと思います。郵便局で出せるそうですが、近くの小さな郵便局では内容証明の取り扱いをしていないと言われました。そこで、大阪中央郵便局に問い合わせると、取扱いがあるということで、大阪中央郵便局に行きました。事前に電話で問い合わせたところ、内容証明郵便の送付のためには、①文書が3部、②宛先を書いた封筒1つ、③送料が必要だと言われました。
そして、窓口に持参すると、10分程審査のために待たされましたが、問題がなかったようで、郵送料2024円を払い、私用の控えとして、文書を1通返却されました。なお、文書と一緒に、返し忘れていた社員証も同封しようと思いましたが、文書以外は封筒に入れることができないと断られました。

●内容証明郵便取扱いがない郵便局もある!
すべての郵便局で内容証明郵便の取り扱いがあるわけではありません。
そのため、お近くの郵便局の中で大きな郵便局を選び、事前にご確認いただくことが安全でしょう。

●郵便局窓口への持参物
①作成した文書3通
3通用意した上で、それぞれにハンコを押しておく必要があります。文書が2枚以上ある場合は、割印も必要です。

②封筒1通
会社に送付するための封筒です。
封筒のあて名と差出人名は、作成した文書と記載を同一にしなければならないことに注意が必要です。省略したりしてはいけません。

③郵送料
文書の枚数や速達を付けるか等で料金が変わってきます。詳細については、郵便局のホームページでご確認下さい。

●文書1通以外は同封できない
郵便局のホームページにおいて、次のとおり、案内されているとおり、文書1通以外のものについては、封筒に入れて送ることはできません。

内容証明の取扱いは、主に次の条件を満たすものについて取り扱います。
文書1通のみを内容としていること。
このため、内容文書以外の物(図面や返信用封筒等)を同封することはできません。
また、為替証書や小切手等の有価証券についても同様です。

●インターネット
インターネットでの内容証明の送付も可能です。
ただし、登録やクレジットカードが必要になります。
詳しくは、コチラをご覧ください。

内容証明の到着を確認する

私が内容証明を送付して、5日後に、配達証明書が届きました。配達証明書には、内容証明を受け取った日付が書いてあり、時効が成立する前に届いたことが確認でき、安心しました。

内容証明が到着すると、郵便局から受取証明書が届きます。
もし、会社が内容証明の受取を拒否すると、郵便がそのまま戻ってくることになります。
なお、内容証明を送付する際に、郵便局で番号が付されますので、その番号を確認することにより、配送状況を確認することができます。

配達記録付内容証明は受取拒否をされる場合がある!?

1 受取拒否される場合がある
内容証明郵便を送付する際に配達証明を付けるべきことは初めにご説明したとおりです。しかし、配達証明を付けると、受け取った会社が受け取りのサインをしない限り、配達することはできません。つまり、受取拒否をされることがあります。そうすると、会社に届かないという事態になり、時効も中断しないことになります。このような事態になることを避けるため、次善の策として、特定記録郵便でも、残業代を請求する内容の通知を送っておくべきです。内容は、内容証明郵便で送付するものと同じで構いません。

特定記録郵便は、郵便局のホームページで、次のとおり、定義されています。

特定記録郵便とは
郵便物やゆうメールの引受けを記録するサービスです。配達の際は受取人さまの郵便
受箱に配達します。

つまり、普通郵便と同じで会社の郵便受けに投函されるだけですが、投函された日付を郵便追跡サービスにより確認することができます。特定記録郵便では、内容証明郵便と異なり、誰が、どのような内容の文書を、誰に送付したかについては郵便局は証明してくれません。しかし、受取拒否された場合には、時効を止めることはできませんので、特定記録郵便でも送付することは有用です。

弁護士が内容証明郵便を送るメリット

自分で残業代を請求するのではなく、弁護士に依頼した場合は、弁護士が内容証明郵便を送りますが、弁護士が送った場合、3つのメリットがあります。

①弁護士名での送付
弁護士の名前を出して内容証明を送付することになりますので、内容証明を受け取った会社は心理的に対応せざるを得ない状況になります。
②弁護士事務所が窓口になる
弁護士が交渉の窓口になり直接依頼者に連絡することを控えるよう要求します。そうすると、依頼者は会社と直接交渉をせずにすみ、不利な内容で示談させられることはなくなります。
③訴訟予告に現実味が出る
よく、一般の方でも「訴えてやる!」とおっしゃることがありますが、脅しているだけで、実際は裁判なんてしないだろうと受け取られることが往々にしてあります。
しかし、弁護士が裁判をすると言う場合は、迅速に裁判を行うことができますので、訴えると言われた会社は裁判を避けるため誠実に対応せざるを得なくなります。

最後に

内容証明郵便を送付することは、残業代の請求に有用です。しかし、残業代の計算方法は複雑ですし、ご自身で作った内容証明が妥当なものなのか判断が付かない場合もあります。内容証明の記載に不備があったため、時効が中断されていなかったという事態もあり得るところです。

大阪バディ法律事務所は、残業代請求について豊富な知識と経験があります。
もし、残業代の計算方法や内容証明郵便の書き方に悩まれた場合は、お気軽に当事務所の弁護士までご相談(無料)下さい。

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