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弁護士の残業代請求コラム

学習塾講師と残業代請求

投稿日:2018年2月26日 更新日:

1 はじめに


アルバイト塾講師の賃金について、相模原労働基準監督署が授業準備などの授業以外の仕事を労働時間と認定し、学習塾運営会社に未払い賃金の支払に関する是正命令を出したとの報道がありました(平成27年12月28日付勧告)。
この是正勧告は、1コマの授業ごとに賃金の支払いを受けるアルバイト塾講師のケースですが、アルバイト塾講師だけではなく、正社員の塾講師においても、長時間労働・サービス残業は日常的に行われています。
以下では、学習塾講師の残業代請求の実態について、過去に取り扱ってきた経験も踏まえてご説明します。

2 授業以外の業務時間について

学習塾講師が長時間労働を余儀なくされる最も大きい理由は、授業時間以外の業務が非常に多いことです。
以下で述べる授業以外の業務について、学習塾を運営する会社によっては、労働時間として扱っていない場合もありますが、いずれも会社からの指揮命令に基づき行っている業務といえますので、労働基準法上は労働時間となります。

⑴ 授業準備やテストの採点などの時間

当然ですが、授業を行うには授業準備が必要です。この授業準備は授業開始前に済ませる必要があり、相当程度時間を要します。また、テストの採点を行う場合などにはより多くの時間が必要となります。
過去に扱ったケースでも、授業のために前日から準備を行う必要があり、この授業準備のために多くの残業を余儀なくされていたという事情がありました。

⑵ 生徒からの質問や保護者との面談対応の時間

学習塾講師の場合、授業が終わったらすぐに業務を終了させることはできず、授業内容に関する生徒からの質問にも一定程度答えなければなりません。また、生徒の保護者からの相談などにも対応しなければなりません。
過去に扱ったースでも、生徒や保護者への対応に時間を要し、そのためにサービス残業を余儀なくされていたとの事情がありました。

⑶ 講師の研修などのための時間

これは学習塾を運営する会社の社風にもよりますが、定期的に講師らを集めて、生徒への指導の仕方や業務への取り組み方などを会議で議論したり、講師の能力改善のために研修をおこなったりすることがあります。
この会議や研修は通常の授業以外の時間に行なわれますので、本来、その時間は別途賃金が支払われる労働時間となりますが、過去に扱ったケースでは自己研鑽の場として、労働時間として認められていませんでした。
なお、裁判では、当然、会議や研修に要した時間も労働時間として、残業代が支払われることになりました。

⑷ 営業時間中の電話対応などの時間

学習塾講師の業務では、授業のコマがない隙間時間など生じることがあります。この時間は、自由時間ですので休憩時間とも言えますが、小規模な校舎では、授業のコマがない講師が電話番や受付などを行うことがあります。
このような電話番や受付を行っているような時間は、現実に業務を行っていなかったとしても、電話が鳴ればすぐに業務を行えるように待機しているので、時間的場所的に拘束されていることから、労働時間になります。
過去に扱ったケースでも、このような空き時間が休憩時間か、労働時間にあたるかで争点となりました。

3 生徒のスケジュールに合わせた変則的な勤務も多い


学習塾講師は、基本的に生徒のスケジュールに合わせて勤務時間が決まるとの特徴があります。そのため、通常業務以外の変則的な業務も数多くあります。

⑴ 季節講習のための長時間労働

学校が長期休みに入る夏休み・冬休み・春休みなどは、学習塾では季節講習を行うことが通例です。
この季節講習では、午前中から夜までの長時間にわたって校舎を開けて、授業を行うケースが多いです。
そのため、学習塾講師の多くは、季節講習中のカリキュラムに合わせて、長時間労働を行うことが多いです。
過去に扱ったケースでも、季節講習中の労働時間が長いにもかかわらず、その期間中に十分な手当てが支払われていないことが多くありました。

⑵ テスト対策・受験対策のための補講

また、生徒の学校での定期テストや受験シーズンなどに入ると、学習塾でもこれに合わせて、通常授業とは別に補講を行うことが通例です。
そして、季節講習と同様に補講に対しても十分な手当の支払いが行われていないケースが多く、これらも残業代請求の対象となります。

⑶ テスト当日などの特別な行事

さらに、学習塾では、受験当日などは受験会場の最寄駅に出向いて、試験に挑む生徒の激励を行うことが多いです。
講師らは会社からの業務指示に従い激励のために朝早くに最寄り駅に出向きますが、この激励も会社の業務指示により行っている以上は、労働時間になります。
過去に扱った裁判でも、この激励が労働時間にあたることは認めらました。

4 過去の経験した会社側が主張する残業代対策

以下では、当事務所が過去に扱った学習塾講師の残業代請求事件で会社側からされた反論を紹介します。

⑴ 雇用契約自体を否認する主張

かなり特殊な反論ですが、雇用契約自体を否定する会社がありました。
会社は、講師との関係は業務委託であるとか、組合としてそれぞれが経営者のような役割で学習塾の運営に参画しているなどと主張しました。
当然ですが、このような主張が通る余地はほとんどありません。

⑵ 労働自体を認めない主張

労働自体を認めない主張とは、各労働者が自分の判断で勝手に行ったとか、補講などについて業務指示をしていないなどの主張です。労働者側からすれば、指示に従い行ったのに、裁判になれば、一転して業務指示していないと言われると非常に腹立たしく感じると思います。
しかし、裁判では会社側からのこのような主張は日常茶飯事です。
労働自体を認めないとの主張に対しては、会社から定期的に配られている指導指針、会議資料及び業務メールなどを証拠提出し、会社側の主張の矛盾を指摘して反論することになります。このような資料を予め証拠収集しておくことは残業代請求のために非常に重要です。

⑶ 固定残業代の主張

学習塾講師に限らず、固定残業代の主張は全ての業種の会社からよく主張されます。
固定残業代とは、給与の一部があらかじめ残業代の趣旨で支払われているとの反論でこのような反論が認められた場合、残業代請求が大きく減額されたり、残業代が既に支払い済みと扱われて請求できないことがあります。
会社側が主張する固定残業代が有効な主張といえるかどうかについては、以下の記事を参考にしてください。

 

 

5 最後に


過去に扱った学習塾講師の残業代請求事件では、700万円近い残業代を回収したことがあり、塾講師といえば、非常に労働時間が長いイメージがあります。
もし、現在、学習塾講師をされていて残業代請求を検討されている場合には、授業のカリキュラムなどの証拠資料を収集されておくことをお勧めします。
大阪バディ法律事務所では、学習塾講師の残業代請求についても豊富な実績があります。
過去、または現在、学習塾講師をされていて、残業代請求をお考えの方は、お気軽に当事務所の弁護士までご相談(無料)下さい。

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