残業代請求を会社側にするには、まずあなたの未払い残業代がいくらなのかを計算する必要があります。
残業代の計算方法は、給与の支払方法によって異なります。
以下では、トラック運転手やタクシードライバーに多い歩合給の場合の残業代の計算方法を説明します。
歩合給の場合は、以下の計算式で残業代を計算します。
時間給 × 残業時間 × 歩合給の割増率 =歩合給の残業代
歩合給の場合、「時間給」は、『歩合給の全額 ÷ 総労働時間』で計算します。月給の場合は、給与を所定労働時間数で割って時間給を算出しましたが、歩合給の場合には総労働時間で割るところが大きな違いです。
歩合給の場合、月給とは異なり労働時間に応じて賃金が決まっているわけではないため、時間給を算出するためには歩合賃金全体に対して要した総労働時間で割ることにより時間給を計算する必要があるからです。
また、歩合給の割増率についても、月給制の場合、法定時間外労働に対して、125%以上の割増率で計算を行いますが、歩合給賃金の場合の割増率は、所定賃金部分(100%の部分)は歩合賃金額に含まれており、既に支払済みですので、割増部分(25%)に対してのみ残業代を支払えば足りる計算となります。
この点は月給制と大きく異なり、理解しにくいところですので、以下の具体例に基づいて、実際に残業代を計算して説明します。
職種:トラック運転手
賃金の支払方法:歩合給
歩合の計算方法:運行の先と1ヵ月当たりの運行回数に応じて、賃金が定まっている。
1か月の総労働時間:250時間
1か月の法定時間外労働の時間数:80時間
1か月の深夜労働の時間数:30時間
1か月の歩合給の額:34万5000円
歩合給の時間給の計算
上記の具体例において残業代を計算するには、まず、時間給を計算します。
歩合給の場合の時間給は、『歩合給の全額 ÷ 総労働時間数』で計算しますので、以下の計算式により、1380円となります
なお、歩合給の時間給が最低賃金を下回るような場合には、そのような労働条件での就労は違法となり、時間給は最低賃金額と扱われます。
その際は、最低賃金をベースに残業代を計算することはもちろんですが、基礎賃金部分についても、最低賃金額を総労働時間で積算した額と実際に支払われた賃金との差額分を請求することができます。
つまり、その月の総労働時間数で計算した最低賃金不足分について、労働者は会社に請求することができるのです。
歩合給の時間給を計算したら、次は法定時間外労働と深夜労働とに分けて、残業代を計算します。
歩合給の法定時間外労働の残業代
上記の労働条件に基づいて、法定時間外労働の時間数を80時間、割増率を25%で計算した結果、歩合給の法定時間外労働の残業代は2万7600円となります。
ここで割増率が月給制のように125%とならないのは、歩合給の場合、「100%」に相当する所定賃金部分が支払われていると考えるためです。
歩合給の深夜労働の残業代
同じく、上記の労働条件に基づいて、深夜労働の時間数を30時間、割増率を25%で計算した結果、歩合給の深夜労働の残業代は1万350円となります。
深夜労働の場合、深夜労働時間に就労することが予め想定されていないので、深夜労働時間分が歩合給の所定賃金に含まれると考えることはできません。その結果、月給制の深夜労働の割増率と同様に、25%の割増賃金の支払いが必要となるのです。
最終的な歩合給の残業代
上記で計算した法定時間外労働分と深夜労働分の各残業代を合算したものが、歩合給の残業代となります。
今回の具体例の場合、法定時間外労働の残業代2万7600円と深夜労働の残業代1万350円を合算した結果、1か月の残業代は3万7950円になります。
なお、今回の具体例では取り扱いませんでしたが、歩合給に法定休日労働が含まれるような場合については、法定時間外労働と同様に考え、所定賃金部分を控除し、割増率を35%で計算します。