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弁護士の残業代請求コラム

退職後に残業代請求をするための準備としてやるべきこと

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1 はじめに

「在職中は請求しにくいけど、退職した際には残業代を請求しよう」と考えて、日々働いている方は少なくありません。
実際に、当事務所にご依頼いただき残業代請求を行ったお客様の9割以上が会社を退職されてからの請求でした。
そこで、以下では、退職後に残業代請求をする場合に、準備しておくべきことをご説明します。

2 労働時間の証拠を集める

残業代請求にあたって、もっとも重要なことは労働時間の証明です。
残業代請求するには、自分が働いた時間をできる限り正確に証明する必要があります。
そして、自分が働いた時間は、業務を開始した「始業時刻」と業務を終えた「終業時刻」のそれぞれとその間の休憩時間を証拠等で証明します。

(1)タイムカード
この自分が働いた時間を証明するもっとも代表的な証拠は、「タイムカード」です。
タイムカードは、個々の会社で形式に違いはありますが、一般的には出社時と退社時に打刻し、それぞれの時間が客観的に明確となりますので、極めて有効な証拠になります。
そこで、残業代を請求すると決めたなら、退職前から継続的にタイムカードを写真に収めるなどして、証拠化しましょう。
なお、労働時間の証明は労働日ごとに全日行わなければなりませんから、面倒でありますが、全労働日の労働時間が分かるように、欠かさずにコピーしたり、写真に収めるなどして証拠化する必要があります。

(2)タイムカードが偽造されていたり、タイムカードが存在しない場合
いわゆるブラック企業では、タイムカードを退勤前に打刻するように命令して虚偽の時間を記録させたり、そもそもタイムカードによる労働時間管理を行っていない場合があります。
そのような場合には、タイムカード以外で労働時間を証明する必要があります。
もっとも、タイムカード以外で労働時間を証明する場合は決してない珍しくはありません。特に、民事裁判で残業代請求事件を争うような場合にはタイムカードなどの十分な証拠がそろっていないケースが多いです。以下では、タイムカード以外の労働時間に関する証拠を紹介します、

① 電子メール
タイムカード以外の代表的な証拠には、業務に関連する電子メールがあります。
こちらが上司や同僚に送信した電子メールは、送信した時間まで働いていたことを証明する重要な証拠になります。
また、上司や同僚から受信した電子メールは、そのメール文面などから明らかに時間外労働を指示しているような場合には有力な証拠になります。
電子メールを証拠化するには、写真に撮ったり,プリントアウトして文書化する方法が有効です。なお、写真に撮る場合には、電子メールの送信・受信の日時及び送信・受信のメールアドレスが分かるよう写真にとる必要があるので注意が必要です。

② セキュリティのセット・解除時刻
会社によっては、事務所のセキュリティとして、セコムやアルソックなどの警備会社と契約している場合があります。その場合、セキュリティを解除した時刻とセキュリティを作動させた時刻が警備会社に記録されますので、その記録が出勤時刻及び退勤時刻として使える場合があります。
なお、セキュリティには、事務所全体を管理する場合と、個々の労働者にICカードを付与し、個々の労働者の入退室を管理する場合があります。
もし、前者の場合には、自分が最後に退社した場合しか労働時間を証明する証拠には使えません。自分以外の同僚がセキュリティを作動させたとしても、自分が働いていたことを証明することはできないからです。
一方で、後者の場合には、自分の入退室がすべて記録されていますので、非常に有力な証拠になります。セキュリティに残っている記録から、自分が事務所に存在したこと自体は明らかとなりますし、通常、労働者は業務が無ければ事務所にとどまらずに帰宅するといえることから、事務所に留まっている時間は、特段の事情が無い限り、労働時間となります。
セキュリティのセット・解除時刻は、退職後に弁護士に依頼して取得してもらうことになりますが、どこの警備会社と契約しているのかと、自分に付与されているICカードの識別番号などは写真やメモにより、証拠にしておく必要があります。

③ 交通系ICカードの履歴
会社の通勤に電車などの公共交通機関を利用し、その交通費の支払いにSuicaやICOCAなどのICカードを使用している場合には、その使用履歴も労働時間を証明する証拠となります。
ただし、交通機関の履歴は、数か月分しか取得できないことが多いですので、定期的に取得しておかないといけません。また、あくまで交通機関を利用した時点の時刻を証明するものであり、会社から退出後に近くの寄り道をしている可能性もあることから、交通機関利用の履歴のみでは十分な証明とはいえないでしょう。
そのため、交通機関利用の履歴は、他の証拠と併せて使用することを念頭において収集することが必要といえます。

④ グーグルマップなどの位置情報アプリ
最近では、位置情報アプリを利用した労働時間の証明も有効となっていて、残業代請求に特化したアプリなども開発提供されています。
もっとも、そのような特別なアプリを使用しなくとも、スマートフォンであれば位置情報の履歴は自然に記録されている場合があります。
以下では、Googleの位置情報アプリやiPhoneを利用して、労働時間を証明する方法をご説明します。
なお、位置情報アプリを利用するには、位置情報サービスにより、自分の位置情報を送信すること自体を許可しなければなりませんので、注意が必要です。

(1) グーグルマップのタイムラインを使用する方法
グーグルアカウントにログインしたうえで、Googlemapの位置情報の取得を有効にしている場合、Googlemapを起動し、メニューにある「タイムライン」を選択すれば、日時と場所と滞在時間が表示されます。これはGooglemapがGPS機能に基づいて取得した位置情報をまとめたものですので、客観的な証拠になります。

(2) iPhoneの場合
また、iPhone端末を利用している場合には、以下の手順でタップすることにより、iPhoneに記録された位置情報とその滞在時間を確認することができます。

①「設定」⇒②「プライバシー」⇒③「位置情報サービス」⇒④「システムサービス」⇒⑤「利用頻度の高い場所」⇒⑥職場のある地域を選ぶ⇒⑦「職場」

実際の画面で示すと以下の手順になります。

1.設定のアイコンをタップした後、「プライバシー」をタップする。

2.「位置情報サービス」をタップ

3.「システムサービス」をタップ

4.「利用頻度の高い場所」をタップ

5.履歴の中から就業場所がある市区町村をタップ

6.「職場」をタップ。なお、『職場』とは、その場所に滞在する時間、頻度、規則性などからiPhone端末が勝手に分類します。そのため、移動が多い営業マンなどは『職場』という分類が行われていないかもしれません。

7.職場と表示された場所の滞在時間は日ごとに表示されます

上記の写真のとおり、位置情報の送信が有効に働いている場合には、その場所に、何時から何時まで滞在したかが、日ごとに明らかとなります。

もっとも、この方法による位置情報の履歴は50日分程度しか蓄積されないため、これ以前の期間に関する労働時間を直接証明することはできません。
しかし、一部の期間といえども客観的な証拠として十分な証拠価値があります。定期的に同画面をスクリーンショットするなどして、画像を保存し、証拠化しておくことをおススメします。

⑤ 手帳メモや家族とのLINE履歴
誰にでもすぐに作ることができる証拠として、手帳などに自分の出勤時刻と退勤時刻を記録する方法があります。このような手帳メモは誰にでも作ることができる手軽なものですが、その手軽さゆえに裁判上は証拠としての価値は低くなります。
同様に家族などにLINEアプリで「今から会社出る」などと送信した履歴も、自分で簡単に作成できますので、その信用性が疑われ、証拠としての価値が高いものとはいえません。
もっとも、ほかに一切の証拠もなく、会社においても労働時間を管理していないような場合には手帳メモが唯一の証拠となりますので、一定程度の証拠価値が認められる場合もあります。

もし、証拠メモなどの自分で容易に作ることができるものを証拠とする場合には、できるだけ詳細なメモを作成することをおススメします。
例えば、出勤時刻と退勤時刻は分刻みで記載し、その日にどんな業務をどの程度行ったのかもできるだけ細かく1日ごとに記載していくことで、その手帳メモの信憑性は増します。

(3) まとめ

以上で説明した証拠以外にも労働時間を証明する証拠は多数あると思いますが、証拠の収集で重要なことは、その証拠が客観的なものであればあるほど証拠としての価値が高くなるという観点です。
電磁的な機械により自動的に時間が記録されているような場合には改ざんのおそれが少ないので、証拠としての価値が高くなります。タイムカード、交通系ICカードやセキュリティのセット・解除の履歴などがそれにあたります。

また、労働者が作成した文書であっても会社側の管理者がハンコを押すなどして、その記載内容を認めているような場合には高い証拠価値があるといえます。業務日報などに記載された時刻は、一度会社が認めていることから証拠価値が高いといえます。

退職後に会社に対して残業代請求を行うことを決意されたら、その時点からすぐに労働時間に関する証拠の収集を行うことをおススメします。
労働時間を証拠化する準備は早ければ早いほど効果があります。

3 就業規則や賃金規定などを集める

会社には、就業規則や賃金規定などが備わっている場合が多いです。
常時10人以上の労働者を雇用する会社では、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります。
就業規則や賃金規定などは特に気にしないで働いている方も多いと思いますが、就業規則や賃金規定には、意外なことが書かれている場合もあり、事前にこれを確認し、場合によっては写真に撮るなどして証拠化しておくことも有意義です。

過去に扱った事例では、毎日9時から20時ころまで働いていたので、所定労働時間は8時間と考えていたところ、就業規則をみてみると所定労働時間が7時間30分と記載されていたケースもありました。
この場合、就業規則に規定に基づいて、7時間30分を超えた部分は全て残業時間となるため、自分が考えていたよりも多い残業代が認められることになります。
このように、事前に自分の労働条件を確認しておくことで、会社に対して請求することができる残業代をより正確に計算することが可能です。
また、会社によっては、退職後は就業規則や賃金規定などは一切開示しないなどと強硬な対応にでることがあります。このような場合には、民事訴訟を提起し、裁判所を通じて就業規則や賃金規定の開示を強制するまでは、内容を確認することが困難となるため、残業代の正確な計算できなくなります。
会社に無駄な抵抗をさせないためにも、就業規則や賃金規定を確認し、証拠化しておくことは有益な準備といえます。

4 事前に弁護士に相談する

当然ですが、残業代は自分で請求することができます。
しかし、自分で請求しても会社が誠実に支払う場合は非常に少ないでしょう。
そのため、残業代請求を行うにあたっては、弁護士などの専門家に依頼することが必然的に多くなります。
この場合に、退職してから弁護士に相談するよりも、退職前に予め弁護士に相談しておいた方がよりスムーズな残業代の請求が可能になります。

労働者が在職中に相談された場合、労働者は会社内部にいるため、会社内の資料を確認したり、必要なものをコピーしたり写真に収めたりすることが可能です。特に、弁護士が事情を確認し、各労働者の働き方に応じて、有効な証拠の収集を指示することが可能です。

もし、退職後に弁護士が請求を行い資料の開示を求めても、会社側は自分に不利な資料の開示には応じないでしょう。
そのため、本当に必要な資料は在職中に確保しておくべきです。そして、何が本当に必要な資料であるのかの見極めは容易ではありませんので、専門家である弁護士に事前に相談し、指示を受けておくことが重要になります。
当事務所の過去のお客様には、半年ほど先の退職予定に向けて、労働時間を証拠化した結果、裁判で希望通りの解決金を獲得された方もおりました。

5 最後に

大阪バディ法律事務所は、残業代請求について豊富な実績があり、複雑な残業代計算にも対応できます。
また、労働審判、訴訟の場合でも、初期費用は頂いておりません。
退職後に残業代請求をすると決意された場合には、退職予定が先であっても、是非、当事務所の弁護士に一度ご相談(無料)下さい。

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